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題名『感謝の花束を』
全年齢 男性一人用 3〜５分
明日自分の結婚式がある男性。母親と最後の夜。
自分の想いを打ち明ける。
（『結婚式前夜』より題名変更 2019.6.27）
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母さん？寝た？
ていうか寝てると思って来たんだけど…。
よいしょっ。
普通さ、こういうのって花嫁が自分の両親に言うんだろうけど。
なんとなく、オレも言いたくなってさ。
でも起きてる時に正面きって話すのは恥ずかしいから、寝てる時っていうのはずるいけど、許してな。
オレを産んだ時、結構な難産だったって、昔、父さんから聞いてる。
産んだ直後、母さん、嬉しくて泣いてるのを自分で気が付かなくって、助産師さんに「ティッシュ持ってきますね」って言われて、そこで自分が泣いてるのに気づいたって。
「赤ちゃんに触ってもいいですか？」って言いながら泣いてたって。
オレって産まれた瞬間から愛されてたんだな。
オレの極度の負けず嫌いなところはずっと治らなくって。
負けそうになる勝負事は、決着が着く前にもう泣いてたよね。
でも、それでいいんだって。悔しいって思うことが大事だって。
泣くことを否定しないでくれた。
やりたいことがコロコロ変わったし、何をしたらいいのか分からないって迷ってた時も、オレが納得行くまで待っててくれた。
お年玉は大事にしなきゃダメだって。
くれた人の愛情が一緒に入ってるからって。
それで母さんが預かっておくねって毎年全部預けてたから、もう使っちゃってるもんだと思ってたけど…。
でも…。でもさっき、もらった通帳って。
……そういうことでしょ？
……なんかもっと伝えたいことあったんだけど。
色々思い出してたら、なんか胸がいっぱいになってきた。
これからオレが守るべき一番は母さんじゃなくって、あいつになっちゃうけど。
いつか”ありがとう”が素直に言えるようになったら、直接言うよ。
なんかそん時はお互いモジモジしてそうだな。
…ん？…母さん？
起きたのかと思ったけど違うか。
もう遅いからオレも寝るかな…。
じゃ、明日、よろしくな。
それと明日、父さんの写真、忘れないように頼むな。
忘れたら、母さん天国行った時、父さんにすごく嫌味言われるぞ。
おやすみ、母さん。
…１人で頑張ってくれてありがとう。