「ゆっくりおやすみ」(全年齢)男性1人用 10分程度

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題名『ゆっくりおやすみ』
全年齢  男性1人用  10分程度

なにかに疲れてるような、悩んでいるような彼女。
あんまり甘えない女性なので、少し強引に励まそうとする彼氏。添い寝する。

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(あればSEドライヤー音)

はい。ドライヤー終わり。
綺麗に乾いたよ。

じゃ、寝よっか。
ん? まだ眠くない?

だーめ。一緒に寝るよ。
行こ。

もー。
強制的に連れてくよ?
体調も良くなさそうだし…。
はい、行こ。

(ベットへ)

はい、ここ入って。
腕枕。

強引?

こうでもしないとまたひとりで悶々と考えて寝ないでしょ?

いいからおいで。

良くできました。

で、今日は何悩んでる?

平気なフリしてたみたいだけど、俺の前じゃ誤魔化すのなんて無理だからね。
帰ってきた時、ここ。
眉間に少しシワよってた。

言いたくない?

そっか…。

じゃ、俺の話すこと、ひとりごとだと思って聞いてて。


んー、なんかさ。

自分が好きなことしてる時ってすごいモチベーションあがるじゃん。

勉強でも仕事でも、やらなきゃいけない義務っていうのじゃなくて、一生懸命やってることが気持ちよかったりするよね。

で。 そんな時に突発的に自分がそこを抜けなくてはいけない状況になって。

でも自分的には一生懸命やってきたし、まわりもそれなりに認めてくれてるし、今ここを抜けたら、すべてがうまく回らなくなるような気がして、抜けられない、休めないって無理しちゃうこと、ない?

いま自分が抜けたら、戻るとこがなくなっちゃうって思っちゃわない?

それで実際抜けてみたら自分がいなくても意外とちゃんと回ってたりして。

ホッとしたのと同時に自分はそこに必要なかったのかと不安になったりする。


でもね、自分が抜けてもなんにも問題なかったのは必要とされてないからじゃないんだ。

戻ってきた時に前と同じ状況を保ってなきゃって。
頼りにしてるからまた戻ってきてもらわなきゃって、周りが頑張ってくれたからなんだよね。

ちなみにこれ、俺の実体験。

だから、肩の力、抜いて。

泣きそうになるなら、心と体が悲鳴あげてる証拠。
素直にその感情に流されてもいいんだよ。

そうやって吐き出していいんだ。

的はずれなこと言ってたら、ごめん。


ちょっとギュッてしていい?

(寝ながら抱きしめる)

ほら、なんか体こわばってる感じする。

赤ちゃんがよくお母さんの心音聞いて安心するっていうけどさ。

あれって心音が聞こえるほど密着してスキンシップとってることもあると思うんだ。

俺が出来ることといったら、こうやって髪をすいて。
頭を撫でて。
そして抱きしめることしかできないけど。

ガチガチになった体を。
いっぱいいっぱいになった心を。

俺がほどいてやるから。

自分が納得行くようにやっておいで。

でも倒れそうになるまでやるのは禁止。

俺よりもそっちを優先してるときは、ヤキモチやくけどさ。

でも、いつでも戻ってくる場所であるようにするから。


俺よりも小さなこの体で頑張ってるんだよな…。

(おデコにキス、軽くリップ音)

ん?なんかいとしくなっちゃったから。

はは。ごめんって。

あっ。 なんで後ろ向くの?

いいよ、もう。
後ろからハグするから。


分かってる。
泣き顔見られたくないんでしょ。

無理に普通にしようとしなくていいから。
今なら見えてないから。
全部、涙、出しちゃっていいよ。


大丈夫って言う言葉は、ほんとは大丈夫じゃない自分への呪文みたいなものだよね。
まだ大丈夫だから、頑張れるはずって。

強がって大丈夫って言葉を使うのは、その呪文で自分を奮い立たせられるならいいけど、俺の前で大丈夫じゃないときは使わないでね。

ていっても、隠そうとするんだろうけどさ。
でも、俺だって今までずっとお前のこと見てきたんだから、微妙な変化だって気が付かないわけないでしょ。

だから諦めて。
俺の前では強がるの、なしね。


ちゃんと、涙全部出せた?

肩の力、抜けた?

ん、ちょっと体も柔らかくなったような気がする。

寒くない?
そう?よかった。

くっついてたらあったかい。

お風呂上がりだから、いい匂いもするし。
同じシャンプーの香りがするって幸せ。

俺ね、髪の毛触るの、好きみたい。
髪を撫でて、頭を撫でて、頭をよしよしするの、好きかも。

ん?俺にも?

ふふ、じゃあ、いつかは俺にもしてもらおうかな。


明日…。もし目が腫れてたら、お出かけは午後からにしよ。
ちょっとゆっくりと寝て、お昼ごはんは俺が作るかな。

欲しかった服、見に行くのもいいね。

DVDいっぱい借りてきて見まくるのもいいかも。

…少しゆっくりしよ。
また、進めるように。


おやすみ。

安心して、ゆっくりとおやすみ。

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