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題名『後輩くんは好きしか知らない』
全年齢 男性１人用 10〜15分程度
入学以降、男子高校生は先輩女子へアプローチを続けている。
しかし最近は接触を控えていた。
体育祭の日、久しぶりに会話をすることになる。
優しくて、激しくて、真っ直ぐな彼の一途な想いは先輩へ届くのか。
〈キーワード〉後輩男子、告白、体育祭、保健室、一途、ハグ、キス
タイトル変更可
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失礼しまーす、って…誰も居ないの？
体育祭だから、先生、他の生徒、手当てしてんのかな…。
えーと、消毒しなきゃ。
どれだろ？？
（ドアが開く）
えっ。なんで保健室に？
…そっか。保健委員だっけ。
…手当してくれるの？
ありがと。
…じゃ、お願いします。
（消毒してくれる）
いてっ！
もうちょっと優しくしてください…。
あの、先輩…？
………その後どう？
あーいや、違うな。
好きな人できた？
…いや、それも変か。
最近話してなかったからさ。
なんか、元気かなーって…。
ん？
さっきの騎馬戦？
頭から落ちたけど大丈夫だったみたい。
だってほら、左腕の怪我しかしてないし。
次の競技も出られる。
……もしかして、心配してくれた？
なんて、そんなわけないか…。
先輩は調子どう？
リレー出るんでしょ？
足、速いもんね。
だって俺が先輩見つけて近寄っていったら、すばやく逃げていったりするし。
まぁ、それが普通の反応だよね。
接点のなかった後輩から突然「付き合って下さい」なんて言われたら、
引くに決まってる。
俺さ…。この前先輩のこと、窓から見てたんだ。
見てたっていうか、たまたま近くに居合わせて、先輩の姿が見えて。
それで自分が見えないようにしゃがみこんで聞いてた。
盗み聞きしたみたいになって、ごめん。
そのときは先輩が友達と一緒にいて。
友達がなんかつらそうで。
それでも強がってる友達に、先輩は「無理そう？」って聞いてた。
普通は“大丈夫？”って声かけるところなのに。
先輩らしいなって思った。
だって大丈夫？って聞かれたら、大丈夫じゃなくても強がって“大丈夫”って答えちゃうでしょ。
でも無理そう？って聞かれたら、“うん、ごめん無理かも”って素直になれちゃうもんね。
強気で、あんまり知らない人でも突っかかっていくのに。
ズバッとはっきり言っちゃうのに。
先輩は心にぎゅっと響く言葉で伝えてくれる。
それって照れて優しく言えないからでしょ？
先輩は自分が思ってるよりずっと…、ずっと優しいよ。
俺、きっと頭おかしいよ。
先輩のことばっかり考えてる。
こうやって当たり前のように心配してくれて。
間違ったことは叱ってくれて。
俺、先輩に好きになってもらいたくて頑張ったけど、
さすがにもうダメかなって。
諦めなきゃって……。
心底嫌われて二度と会えなくなるようなら、それはつらくて無理だから。
そう思って最近は、先輩に会わないようにしてた。
そう決めたのに。
もう近づかないって決めたのに。
目をそらせばそらすほど苦しくて…。
もう誤魔化せない。
会いたいし、触れたいし、抱きしめたい。
先輩に…。キスしたいよ。
なんで今ここに来たの？
なんでオレが怪我したとこ、見てたの？
もしかして…。
いや、まさか。
だけど…。
顔、見せて？
先輩…。
本当はもう…俺のこと、好きでしょ…？
違う？
おれの勘違い？
なんでここに来たの？
なんかあっても無視しとけば良いのに。
そうやって返事しないのはイエスってとるよ？
だって俺とおんなじ顔してるもん。
目の前に大好きな人がいて、それだけで幸せっていう顔。
俺なんて、怪我の手当してもらう時、時々触れる指先とか、体温とか。
同じ空間にいるっていうだけでドキドキしてる。
もっと近くに行きたい、触れたいって思ってる。
ダメだな。
目の前にいたら欲がいっぱい出てきちゃう…。
だから、先輩。
違うんだったら逃げて。
俺が抱きしめちゃう前に、逃げて。
そろそろこの気持ちをどうにかしないと、苦しいんだ…。
だからさ。こうしよ？
俺、目をつぶるから。
もし…、もし俺のこと想ってくれてるんなら、俺のこの手を握って。
でも、もしなんとも思ってないなら、そのまま保健室から出ていって。
都合いいって分かってる。
しつこいっていうのも重々承知。だから、玉砕覚悟。
最後に悪あがきさせて？
これで本当に…本当に最後にするから。
じゃあ、10数えるね。
いくよ？
１０、９、８、７、６、５、４、３、２…
（手を握られる）
……いいの？わかってる？
俺の手、とったんだよ？
もう一回やり直しとか出来ないよ？
もし自分の気持ちが決まってないなら、手を離して。
カウントダウンに焦って手を取っちゃったなら、逃げて。
もし冗談やノリで手を取ったんなら、ちゃんと全部受け流すから安心してよ。
（強く握られる）
あーぁ、最後にちゃんと逃げ道つくってあげたのに。
強く握り返すとかほんとに、もう…。
もう、知らない。
ありがと……。ほんとに嬉しい。
先輩……、抱きしめてもいい？
会ったら…、会っちゃったら勝手に体が動くからって我慢してたんだ。
（抱きしめる）
やばい。幸せ。
ふふっ。可愛い。
俺の背中に手をまわしてくれてる。
もう、俺のこと、どうするつもりなの…。
そういえば前に、俺が入学してすぐに告白してきた理由聞いてたよね。
好きになるには期間が短すぎるって。
俺、入学してから先輩のこと、知ったわけじゃないんだ。
それはゆっくり話してあげる。
先輩は覚えてないみたいだし。
それに俺、あの頃と見た目違うから。
なんでそんな泣きそうな顔してんの？
覚えてないのが申し訳ないって思ってる？
俺、先輩にあの時ずいぶん助けられたんだ。
それに意識して言ったことじゃなくって、先輩にとってはごく普通のことだったからきっと覚えてないんだよ。
そういう先輩に惹かれたんだ。
だから先輩がつらそうな時は、今度は俺がいち早く気付けるように近くにいるよ。
“もう無理”って弱音をはけるように。
先輩のこと、こうやってギュってできるなんて夢みたい。
でも足りない…。
足りないよ。
…後で殴っていいから。
（軽いリップ音）
…先輩。
嫌がらないと俺、調子にのるよ？
今、どういう顔してるかわかってる？
ここ、保健室だよ？
そーいう顔、俺以外にみせちゃダメ。
（軽いリップ音）
先輩。
俺、先輩にいつかちゃんと言葉で“好き”って言ってもらいたい。
あの時先輩が言ったんだ。
“伝えたい大事なことはちゃんと言葉にしないと”って。
だから俺、頑張ったんだよ。
先輩に大切な俺の気持ち、ずっと伝えてきたんだ。
恥ずかしくって言えないなら、待つよ。
…いつまででも待つよ。
先輩が目の前に居て、抱きしめることができるなら。
あーぁ。時間切れ。
先輩のリレー、集合の呼び出しだ。
……先輩。今日、一緒に帰れる？
…よかった。
先にいなくなったらイヤだよ。
やっと捕まえたんだから。
…もう置いていかないで。
先輩の時間は止まって、俺の時間だけ早く進めばいいって願ってたんだ。
お願い。
俺の隣に…。
隣に、ずっといて。
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